“ あけっぱなした窓が青空だ ”
“ 気の抜けたサイダーが僕の人生 ”
“ 若さとはこんな淋しい春なのか ”
“ うつむいて歩く街に影がない ”
“ 春風の重い扉だ ”
“ 雨音にめざめてより降りつづく雨 ”
“ だんだんさむくなる夜の黒い電話機 ”
“ 針を持つ暖かき手が手をつつんでくれる ”
“ 泣くだけ泣いて気の済んだ泣き顔 ”
“ 洗面器の中のゆがんだ顔すくいあげる ”
“ 病んでこんなにもやせた月を窓に置く ”
“ お茶をついでもらう私がいっぱいになる ”
“ 焼け跡のにごり水流れる ”
“ 耳を病んで音のない青空続く ”
“ 陽にあたれば歩けそうな脚なでてみる ”
“ レントゲンに淋しい胸のうちのぞかれた ”
“ 深夜、静かに呼吸している点滴がある ”
“ 月明り、青い咳する ”
“ 両手に星をつかみたい子のバンザイ ”
“ 抱きあげてやれない子の高さに座る ”
“ 父と子であり淋しい星を見ている ”
“ 夜が淋しくて誰かが笑いはじめた ”
“ 淋しさきしませて雨上がりのブランコ ”
“ 水滴のひとつひとつが笑っている顔だ ”
“ 遠くから貴女とわかる白いブラウス ”
“ 日傘の影うすく恋をしている ”
“ 念仏の口が愚痴ゆうていた ”
“ 何もできない身体で親不孝している ”
“ 鬼とは私のことか豆がまかれる ”
“ 捨てられた人形がみせたからくり ”
“ ずぶぬれて犬ころ ”
“ 地をはっても生きていたいみのむし ”
“ 何もないポケットに手がある ”