あけっぱなした窓が青空だ


気の抜けたサイダーが僕の人生


若さとはこんな淋しい春なのか


うつむいて歩く街に影がない


春風の重い扉だ


雨音にめざめてより降りつづく雨


だんだんさむくなる夜の黒い電話機


針を持つ暖かき手が手をつつんでくれる


泣くだけ泣いて気の済んだ泣き顔

洗面器の中のゆがんだ顔すくいあげる


病んでこんなにもやせた月を窓に置く


お茶をついでもらう私がいっぱいになる


焼け跡のにごり水流れる


耳を病んで音のない青空続く


陽にあたれば歩けそうな脚なでてみる


レントゲンに淋しい胸のうちのぞかれた


深夜、静かに呼吸している点滴がある


月明り、青い咳する

両手に星をつかみたい子のバンザイ


抱きあげてやれない子の高さに座る


父と子であり淋しい星を見ている


夜が淋しくて誰かが笑いはじめた


淋しさきしませて雨上がりのブランコ


水滴のひとつひとつが笑っている顔だ


遠くから貴女とわかる白いブラウス


日傘の影うすく恋をしている

念仏の口が愚痴ゆうていた


何もできない身体で親不孝している


鬼とは私のことか豆がまかれる


捨てられた人形がみせたからくり


ずぶぬれて犬ころ


地をはっても生きていたいみのむし


何もないポケットに手がある ”